前回、前々回を通じて、ChatGPTが便利に使えること、また逆に、注意すべき限界や制限があることをご紹介しました。具体的には、表から特定行(列)を簡単に抜き出したり、計算にも使えることがわかりました。但し、一定桁数を超えた計算を正確に行う為には、道具(Python等のプログラム)の活用が必要でしたね。
さて今回は、思考にチャレンジしてみましょう。ここで「生成AIが思考なんてするの?」と疑問を持たれた方もいらっしゃるでしょう。論より証拠。今回は合計6手で試せます(完全無料です)。
どうでしょう?「3.実行する(⍐押下)」の結果と「6.実行する(⍐押下)」の結果とを比べると、後者(6)の方がより思考をしているように感じませんか?
このゲームは、数字に対応した「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」を連想させるもので、正解は「7:庚」「9:壬」です。つまり、上のケースでは、「3.実行する(⍐押下)」の結果は誤りで、「6.実行する(⍐押下)」の結果は正解でした(なお、毎回結果は異なり、「6.実行する(⍐押下)」なら常に正解になるわけではありません)。
さて、理解しやすいように、言葉を定義してから、ご説明します。
今回のような情報処理は「思考」と呼び、「情報を整理・分析しながら結果を導き出すプロセス」と定義すると、分かり易いと思います。これに対して、前回までのものは「処理」と呼び、「予め決められた手順に基づいて結果を出すプロセス」と定義しましょう。
前々回の「表からの特定行(列)の抜き出し」や、前回の「計算(四則演算)」については、その情報処理プロセスは「予め決められた手順」に当たり、つまり「処理」と言えそうです。ところが、今回の連想ゲームは、一般に「予め決められた手順」というものはなく、少なくとも「6.実行する(⍐押下)」については、その処理過程で、情報の整理・分析を行っており、「思考」と言えそうです。「3.実行する(⍐押下)」の評価は、実のところ難しいですが「当てずっぽう」という「予め決められた手順」で「処理」したと言うほうが正しいかもしれません。
何を言っているのかよくわからないかもしれませんね。この理解の為に、同じ処理を複数回試行してみましょう。まず「3.実行する(⍐押下)」を複数回試して、その後に「6.実行する(⍐押下)」を複数回試してみましょう。
但し、この際にとても大事なポイントがあります。複数回繰り返す際は「Regenerate」ボタンを使って下さい。これは、プロンプトエンジニアリングでは「リサンプリング」と呼ばれる手法で、毎回コンテキスト(前提条件や質疑応答)をクリアする為、同じ結果しか出てこないといった事態を避けることができます。
それでは、「3.実行する(⍐押下)」を複数回試してみましょう。
「2.中央下段の窓に、以下をコピペする」「3.実行する(⍐押下)」→「Regenerate」→「Regenerate」→「Regenerate」...
次に、「6.実行する(⍐押下)」を複数回試してみましょう。
「5.中央下段の窓に、以下をコピペする」「6.実行する(⍐押下)」→「Regenerate」→「Regenerate」→「Regenerate」...
前者が「当てずっぽう」の「処理」に近くて、後者が「思考」に近いという意味が、少し感じ取れたかと思います。
なお、このプロンプト例は、あくまでもChatGPT3.5用です。GPT4系(ChatGPT4やCopilot)だと、もう少し頭が良いので、こんな簡素なプロンプトでは、その違いを感じ取れないかもしれません。ご注意下さい。
最後に「ステップバイステップで考えよう」という、魔法の言葉について触れておきます。これは、Zero-shot-CoTと呼ばれる手法の中で、最も有名なものです。この一文を加えるだけで、生成AIの出力精度が向上したという論文が発表され、話題になりました。なお、Zero-shotやCoTを含め、プロンプトエンジニアリングの基礎を知りたい方は、こちらの実践演習がオススメです。(GW中は特別価格提供中←※ご好評につき延長中!5/7追記 ←終了しました。5/10追記)
さて、いかがだったでしょうか。今回、生成AIによる「思考」を体感してもらいました。生成AIは他にも、「予測」「学習」といった情報処理が可能です。これらについては、また、折を見て触れたいと思います。
なお、「もっと色々なプロンプトに触れて、生成AIを体感したい」と感じた方は、やはり、こちらの実践演習が良いでしょう。この道(自然言語処理技術)10年のプロが厳選した10の演習が含まれています。ぜひご検討下さいm(_ _)m
それではまた次回お会いしましょう。